Aurora-Toha
オーロラとは Aurora/Northern Lights -オーロラ情報局-
タイガやツンドラに降り注ぐ神秘の光
オーロラを一言で説明すると、「北極・南極周辺の成層圏より上空で起こる発光現象」となります。
ここまではかなり昔から分かっていたのですが、いつ現れるのか、どんな動きをするのかは、まだそれほど詳しく分かっていません。
しかし、夜になると音もなく現れ、空を大きく舞って帰っていく神秘の光。
地球が誕生して以来、誰に見せるではなくずっとオーロラは空で輝いていました。
ここでは、オーロラについて思う一般的な疑問を解説していきます。
科学的にオーロラをもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクを参考にしてください。
ウィキペディア「オーロラ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%A9
- オーロラの見える場所
- どこに見に行くのが良い?
- オーロラオーバルとは
- オーロラの見える季節
- ブレイクアップってなに?
- 「オーロラを見るためのコツ」には勘違いがいっぱい
- オーロラの現れる高さ
- オーロラを上から眺められるのか
- オーロラが光る仕組み
- オーロラに色がつく仕組み
- オーロラが現れるのに必要なものは
- ほかの星でもオーロラは見えるのか
- オーロラに音はあるのか?
- オーロラの現れる予測はできるか?予兆はあるか?
- 赤いオーロラは見られるのか
- オーロラにはどんな形があるのか
- オーロラはどうやって動くのか
- オーロラの名付け親は?
- 海外で「オーロラ」と言っても通じない?
- 各国のオーロラの記録と神話
- 日本で見えたオーロラの記録
- 昔の人が考えたオーロラのメカニズム
オーロラの見える場所
カナダやアラスカ、北欧などで見やすいと言われています。
北米では
- カナダ(イエローナイフ、ヘイリバー、ホワイトホース、フォートマクマレー、チャーチル)
- アメリカ・アラスカ州(フェアバンクスとその周辺)、
欧州で見やすい国を挙げると
- フィンランド
- スウェーデン
- ノルウェー
- アイスランド
ほかの地域では(オーロラの鑑賞旅行には向きませんが)
- 南極大陸(昭和基地)
- チリ(ホーン岬近辺)
- ニュージーランド(スチュアート島)
などです。ほとんどが、「オーロラオーバル」といわれる範囲に入っているところです(チリとニュージーランドは外れています)。
どこに見に行くのが良い?
オーロラも見るために(ツアーとして)簡単に行けるのは、イエローナイフ、アラスカ、北欧(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー)です。
では、この中で「どこがいいのか?」となると結構悩むものなのですが、結局「この旅行で何を一番求めるか」で「どこに行くか」が変わるようです。
この三地域の特徴を要約すると、以下のように言えます。
- 観測率のイエローナイフ
- アクセスのアラスカ
- アトラクションの北欧
では、各地域の長所・短所を挙げてみましょう。
各地域を比べてみて、「自分に合ってる!」と思った所をまずは訪れてみてください。
-観測率のイエローナイフ(カナダ)
大抵のガイドブックには「オーロラベルトの真下にあって、晴天率も高い」と書かれていますし、オーロラ研究者の評価も同様です。現地旅行会社が「その夜にオーロラが見られたか」の情報を頻繁に更新していることも、現地の自信を感じさせます。
また、現地での自由度が高いので、写真好きやリピーターには向いていますし、オーロラツアーを催行する現地旅行会社も増えたので、旅行者への選択肢がかなり広がりました。
ただ、日本からイエローナイフに向かうには、カナダ国内での乗換えを1回~2回必要にするので、アクセスの良さではアラスカに劣ります。
また、イエローナイフ行き飛行機は座席数が少ないので、一種のプラチナチケットになっています。
以上のことから、「とにかくオーロラだけは必ず見て帰りたい」という人には最適です。
また、自由度の高さと観光地化していないことから「秘境系・玄人好みのイエローナイフ」とも言われます。
-アクセスのアラスカ(フェアバンクス)
イエローナイフに次ぐ観測率の高さを誇ります。空港も街も大きいので、都市機能は充実しています。
そして、最大の強みは毎年、オーロラのための「アラスカ直行便」が日本の空港から出ること。これに乗れれば、日本から10時間程で現地に着けます。
ただし、この直行便が使えなければ通常、日本-シアトル乗換え-アラスカと言うルートしかないため、イエローナイフに向かうよりも時間が掛かるようになります。また、アラスカ直行便はほとんどがパッケージツアーのものなので、現地に滞在している間、オーロラの旅行者の数も多いですし、個人手配で向かうリピーターには現地の行動の自由度に制限が掛かることがあります。
直行便利用のツアー押さえられるのなら、初心者向けで一番行きやすい場所と言えます。
-アトラクションの北欧(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー)
「晴れた空の下に広がる白い大地にカラフルなかわいいお家」をイメージしますが、オーロラオーバルから若干外れることと、海が近いために天候が不安定なので、残念ながら上記の二つに比べるとオーロラの観測成功率はかなり劣ります。
そして、天候の関係上、夏季はオーロラがほとんど見えません。現地に問い合わせると、「オーロラを見るためだけに夏に来るのはやめて」と言われます。
それから意外に知られていないのですが、北欧は物価が高く(ビール1本1000円とか)、これは北米の僻地であるイエローナイフやフェアバンクスよりも高額です。
その代わり、鉄道に乗って現地に着いたり、サンタクロースのふるさとがあったり、ムーミンの博物館があったりとオーロラ以外のアトラクションではダントツです。
冬でも気温が高く歴史のある街も多いので、街歩きや買い物を楽しむには良いところです。
と言うことで、「オーロラが見えなくても良いから、旅行全体を充実したものにしたい」と言う方は、北欧が良いでしょう。
オーロラオーバルとは
「北に行くと見える」と言いますが、実際には北極点ではそれほど見えず、磁北極・磁南極を中心にして、ドーナツ型になった地域に多く発生します。これを「オーロラオーバル」とか「オーロラベルト」と言います。
地図や地球儀を見ると分かりますが、地図の北極点と磁石が指す「北」とはかなりずれています。
この磁石の指す北極点を「磁北極」といいますが、ここがオーロラの中心で、ここ中心にして緯度60度から70度の地域に現れます。
この為に、地図で見ると、オーロラの現れる地域が場所によって北緯60度だったり80度だったりします。
また、磁北極と磁南極は完全な「点」ではないので、オーロラの見える範囲も完全な円形になることは少なく、オーロラオーバルも少しいびつな形をしています。
そして、磁北極・磁南極は毎年動きますから、それに伴ってオーロラオーバルの位置や形も少しずつ動いていきます。
オーロラの見える季節
イエローナイフでは、8月初旬から10月前半。11月下旬から5月初めが見やすいです。
ただし、これは「この時期しかオーロラが発生しない」訳ではありません。
よく、「オーロラのシーズン」などと表現されますが、実際のオーロラは一年中発生します。
ですから、「オーロラの見えない季節」というのはありません。
また、別項で書きましたが、オーロラが発生しているのは大気圏外ですから、「季節や天候による発生差」もありません。
ただしオーロラは「光」ですから、人が目にするには周りがある程度暗い必要があります。
オーロラの見える地域は総じて高緯度のため、日照時間の年較差がとても激しいです。ほとんどの地域は夏季に、「百夜」または「百夜状態」になり、夏至近くは真夜中でも明るいままになります。
これとは別に、地上では四季があり、「天候の不順な時期」というのがあります。どんなにきれいなオーロラが現れていても天気が悪くて曇っているなら、やはりオーロラを見ることができません。
このような日照時間の影響や季節の天候の影響の受けにくい時期を、私たちは「オーロラのシーズン」と呼んでいます。
ブレイクアップってなに?
オーロラの動きのひとつで、夜空の一点から突然光が吹き出して激しく動き、その動きが空全体に一気に広がっていく現象を言います。
昔の人はこれを「天が裂ける(Break up)」と表現しました。日本語では「オーロラ爆発」と訳します。
この現象を言葉で表すのはとても難しいのですが、
「いろいろな色の、いろいろな形のオーロラが、全天をいろいろなスピードで動きまわること」とか、「空の各部分が、いろいろな色、いろいろな形で勝手に動いている様子」とでもなるでしょう。
何百回も見ている研究者やカメラマンでも、夜空いっぱいにオーロラが爆発すると、全身ににパルスが走ります。
二度と同じ動きのものが発生することはなく、どんなに激しくても数分間で消えてしまいます。
ちなみに、このブレイクアップという言葉は、オーロラ物理学の専門用語でもあり、オーロラの学術論文でも普通に使われます。ですが、このブレイクアップが起こるメカニズムは、学会で一致した理論がまだないそうです(つまり、良く分かっていない)。
「オーロラを見るためのコツ」には勘違いがいっぱい
オーロラの発生メカニズムなどを研究する「宇宙物理学」という分野はまだとても新たしい学問で、今までの「常識」が覆されることがよくあります。
オーロラ研究をされている、上出洋介先生(元名古屋大学太陽地球環境研究所所長)は、自身の著書の中で、
「自分が博士号の時に書いた論文は、もう半分ぐらいがウソになってしまった」
と書いていました。
ほんの10年程度で、それほど学界の定説が現在でも変わって行ってしまう研究分野なのです。
つまり「オーロラ」についての記述のある本は、古いものほど信憑性が無くなります。どんなに有名な人の本でも頑迷に信じていると損をすることがあるので、気をつけてください。
たとえば・・・
- 寒いとオーロラがよく現れる
→放射冷却で空が晴れるので、それだけオーロラを見つけやすくなるだけです。
- オーロラは冬になると現れる
→前出の通り、夏でもよく見えます。
- 満月ではオーロラが見えない
→満月の夜でもオーロラはよく見えます。実際に見たことのない人の意見が通説になってしまった本当に残念な例です。
- 山がちで標高の高いところのほうがよく見える
→俗説でしたが、地上の地形はオーロラには影響しないと言われています。
- 太陽黒点の11年周期に連動する
→実は、黒点とは関係がなく、無黒点でもオーロラ爆発は起きます。
そして、11年周期とオーロラの発生率は連動していないです。
などです。
オーロラの現れる高さ
大体、低いところで上空80キロ高いところで500キロほど上空の、「電離層」に現れます。
これは、成層圏よりも高いところで、人工衛星の飛んでいるところよりは下。
ちなみに、航空機は地上約10キロ、スペースシャトルは500キロ以上の上空を飛びます。
こんな離れたところに現れるものですから、カメラでフラッシュを焚いてももちろん写真は撮れません。
でも、「欧州へ行くときに機内で見たオーロラは、目線より下に見えた」という体験をする方が多いです。
これは、地球が丸いために目線より下に見えます。地球儀を見ると分かりやすいです。
ずーっと遠くにある地平線よりさらに向こうのオーロラが見えた場合、目線より下に見えます。
オーロラを上から眺められるのか
上記のように、スペースシャトルがちょうどオーロラよりも上空を飛びます。
ですから、スペースシャトルや国際宇宙ステーションから見た、地球にドーナツ状にかぶさったオーロラの画像が時々公開されています。
近年、商業ベースの宇宙旅行が本格化します。これに乗る人は、運がよければオーロラも見られるでしょう。
オーロラが光る仕組み
基本的には蛍光灯と同じです。
真空管の中に大きな電流が流れると、真空管内にわずかに残っている空気の原子に電流の電子が衝突して、そのときの影響で光を発します。
これと同じことが、宇宙空間でも起こります。
オーロラに色がつく仕組み
虹と違ってオーロラの色は有限ですが、
肉眼で見られるオーロラの色は、緑、ピンク、青、紫、赤です。
見える仕組みは、ネオンサインとよく似ています。
宇宙空間上の薄くなった空気のなかで、どのくらいの高度にあるどの空気の電子に電流が当ったかで大体決まります。
大雑把には、電子が
- 上空180キロから500キロ以上で酸素分子に当る: 赤
- 上空100キロから250キロで酸素分子に当る: 緑
- 上空80キロから120キロで窒素分子に当る: ピンク、青、紫
と、見える色が変わります。
ただし、流れる電流が強くなければ、発光したときの光も弱いので、肉眼では見えないです。
それから、上空180キロ以上は更に空気が薄くなるので、かなり大きな電流が流れないと肉眼で分かるほどの発光はしません。ですから、赤いオーロラはなかなか現れないです。
また、このように宇宙空間の大気の様子で見える色は変化するので、地上の場所によって「ここでは○○色が見える」と言うことはありません。
ですので、
「世界で唯一、七色のオーロラが見られる場所」とか
「○○は赤いオーロラが見やすい場所」
という記述は間違いです。
ただ、「オーロラが頻繁に現れる場所」=「いろんな色が見られる確率が上がる」=「赤いオーロラの見られる回数も多い」と言うのは事実です。ややこしいですが。
オーロラが現れるのに必要なものは
オーロラの発生には3つの条件が必要で、
1、薄い大気 2、ある程度の磁場、3、荷電粒子
です。
- 薄い大気
成層圏よりも上空の部分「電離層」には、ほとんど真空ですが、少しだけ空気が残っていて、オーロラの発生にはちょうどよい濃度になっています。
- 磁場
地球全体が大きな磁石になっていて、そのために地球全体を磁場が覆っています。(だから方位磁石を使うと北が分かる)。
この磁場と、磁場の強さがオーロラの発生と強弱に影響します。
- 荷電粒子
太陽から放出されるエネルギー「太陽風」の中に、オーロラ発生に必要な電子「荷電粒子」が含まれています。やはり、この荷電粒子と粒子の量がオーロラの発生と強弱に影響します。
ほかの星でもオーロラは見えるのか
上記の、薄い大気、ある程度の磁場、荷電粒子が揃う惑星なら、オーロラは発生します。
現在、木星、土星、天王星、海王星ではオーロラの発生が確認されています。
オーロラに音はあるのか?
昔から「音が聞こえた」という記録はあるのですが、科学的には証明されていません。録音されたことがないのです。
そして不思議なことに、「ヒュー」とか「スーッ」とか「ジリジリ」とか、「紙をこすり合わせるような音」「枝が風で擦れる音」などと、音を聞いた人によって、聞こえた音がさまざまです。
また、「オーロラが大きくなるのと一緒に音も大きくなり、オーロラが消えていくと音も小さくなって行った」という人が多いです。
「音」とは「空気の震え」を鼓膜がキャッチしたものです。
でも、オーロラの発生するところは「薄い空気」しかないので、最初から音が発生しにくいです。
また、数百キロ離れた所の音が聞こえてくるのも難しいことです。
そして、「数百キロも離れたところで発生した音が、(オーロラの大きくなるのにあわせて)時間差なく聞こえてくる」というのもおかしな話です(5分は遅れて聞こえるはず)。
ということで、「オーロラの音」については今のところ不明です。
可能性として考えられることは、オーロラが発生しているときは膨大な電流が流れます。
「そのオーロラ発生ときに生まれた電波を人がキャッチして、その電波を脳が「音」として認識するのではないか」ということです。
これならオーロラの大きさに合わせて音が変化するのも、人によって聞こえたり聞こえなかったりするのも、人によって聞こえた音が違うのも説明が付けられそうです。
オーロラの現れる予測はできるか?予兆はあるか?
実は、オーロラ発生の予測はある程度できます。一番簡単なのは太陽の活動を観察する事です。
オーロラ発生要素のひとつである「荷電粒子」は、太陽から流れて来るエネルギー「太陽風」の中にあります。そして、太陽で大きなフレア爆発が起こると、大量の太陽風が放出されます。ですから太陽を観察して、太陽風がたくさん地球に向かっていると分かれば、2~3日後に大きなオーロラが地球で発生する可能性が高いのです。
新聞で時々、「太陽で巨大フレア。オーロラ発生の可能性」などという見出しが出ますが、研究機関が太陽を観察していて、上記のような状態が起こるとこういう報道が流れます。。
また、地球の磁場を測定していて、その磁場の変化を読むことによって大きなオーロラの発生を予測することもできます。
ただ、どちらにしても、これらは現地でオーロラ待ちをしているときには、あまり意味がありません。
と言うことで、現地に住んでいて経験上、「オーロラが出るかも」と思う予兆を載せてみます。
- いつもに比べてラジオにやたらとノイズが入る
- 逆に、ラジオが入らないほど街から離れているのに、今日はラジオが良く入る
- インターネットの通信がぶつぶつ途切れる
- 犬やコヨーテが遠吠えを始める
これらの現象のあとに、大きなオーロラが現れる事がそこそこあります(100%じゃないですが)。
滞在中の参考にしてください。
赤いオーロラは見られるのか
現地でとてもよく聞かれる質問なのですが、私はいつも「難しいと思います」と答えていました。
実際、ほとんど見られません。
私も記録のために便宜上、オーロラのランク付けはしますが本来、自然現象に評価を付けること自体がナンセンスだと思っています。実際にはオーロラに「良い」も「悪い」もないので。
ですから、滞在者がオーロラを見る際にも、「普段出ないような珍しいオーロラを見られるか」かどうかという通信簿的な見方ではなく、「二度と同じものがない、今日のオーロラ」を自分の目で見られるかどうかに焦点を合わせて欲しいと思っているので、「難しいと思います」とあまり期待を持たせない案内をしていました。
質問した方の中には"冷や水を浴びた"ように感じる方もいたとは思うのですが、あまり「赤いオーロラ」に拘ると、滞在中にかなり大きなオーロラが出ていても、「赤いオーロラを見るんだ!」という期待が大きすぎて、その方がその大きなオーロラを見たときの印象が薄くなるようなのです。
こういうことが度々あり、あまりに勿体無いので、こういう方にはツアーの出発前にオーロラへの期待度を少し小さくしてもらっていました。
それでは、赤いオーロラがあまり見られない理由ですが、
まず、赤いオーロラの発生自体がかなり珍しいのです。
私は毎日夜の空を見ていましたが、赤いオーロラを肉眼で見るのはシーズンに2~3回です。
しかも、「ツアーの時間外」に見たものも含めてです。
それと人の目には、「赤いものを見るのは苦手である」という欠点があります。
新聞などに載る「赤いオーロラ」はほとんど、肉眼では見えていないんです。撮影者のコメントがあると、「何も見えなかったけど、方角を定めて撮ってみたら(赤く)写ってた」などと載っている事が多いです。
カメラは、人の目より赤い色を見る力があるので、このような事が起こります。
私も、「赤いオーロラ」を写す機会なら、シーズンに20回ぐらいあります。
現在は、旅行者よりは「赤いオーロラ」が出ているかどうかは分かるようになりました。なんとなく「夜の暗さ」の質というか、雰囲気が違うのです。年間数千枚のオーロラを撮ってきた功徳だと思っています。
と言うことで、赤いオーロラは期待をせずに、「見えたらラッキー」ぐらいに思ってください。
オーロラにはどんな形があるのか
百科事典や昔の本を見ると、オーロラには「カーテン状」「渦巻き型」「放射状」など、様々な形態が図解されていることがありますが、現在の研究ではオーロラの種類は2種類のみです。それは、
「はっきりオーロラ」と「ぼんやりオーロラ」
という、脱力しそうな名前の2つです。
-はっきりオーロラ
「はっきりオーロラ」というのは、通常私たちが想像する、地球上にドーナツ状に現れるオーロラのことです。
この中に、「カーテン状」とか「渦巻き型」、「放射状」といった名前の付いたオーロラがあるのですが、実はすべて同じものです。
同じオーロラを複数の人が見ていて、観察者のいる場所が離れていると、ある人には「カーテン状」に見えたり、あるに人は「渦巻き型」に見えたりと、形が変わって見えているだけなのです。
あなたのお部屋にある、風に揺れているカーテンを見てください。
部屋の隅からカーテンを見ると、もちろんいつもの揺れているカーテンに見えます。
では、窓のところで寝転んで、揺れているカーテンを真下から見るとどうなるでしょうか?
いつものカーテンよりすそが短く見えて、揺れる時に渦を巻いていたり、放射状に動いていたりする場所があると思います。
オーロラを見るときも、同じことが起こります。
ですから現在は、全てひとまとめにして「はっきりオーロラ」と呼んでいます。
-ぼんやりオーロラ
では、「ぼんやりオーロラ」というのは何かというと、地球上にドーナツ型に広がるはっきりオーロラの外側に、もうひとつ、ぼんやりしたオーロラが、やはりドーナツ型に広がります。
はっきりオーロラに比べると、ずっと光が弱くてぼんやりと、薄い雲のように見えるので、「ぼんやりオーロラ」と呼んでいます。
実際に肉眼で見ると白っぽい雲のように見えて、「本当にオーロラなの?」と思ってしまうのですが、これも立派なオーロラです。
カメラで撮ると、雲と違う形に写ったり、色が付いたりするのでちゃんと見分けられます。
オーロラはどうやって動くのか
実はまったく動いていません。
原理は街中の電光掲示板と同じで、掲示板では文字が動いているように見えますが、点滅のパターンが隣の列に再表示されていっているだけです。
オーロラも同じように、空の各場所がめいめいに点滅しているのですが、それなりのパターンを持っているので、あたかも動いているように見えるのです。
オーロラの名付け親は?
17世紀に名前が付きましたが、名付け親には2つの説があります。
- ひとつは、ピエール・ガッサンディ(フランスの物理学者・数学者・哲学者)、
- もうひとつはガリレオ・ガリレイ(イタリアの物理学者・天文学者・哲学者)。
名前の由来は、ローマ神話に登場する暁の女神(アウロラ・ギリシャ神話ではエーオース)より。
その後の研究から現在、ガリレオの説が有力であると言われています。
ガリレオも、1607年11月17日にイタリアで大きなオーロラを見ました。その光に圧倒されて、「オーロラ」と名前を付けたそうです。
ちなみに、ガリレオはオーロラ発生のメカニズムを名前の由来のように、夜間に見える太陽の反射光として説明しようとしていたそうです。
ところで、英語では通常「オーロラ」とは言わず、
- ノーザンライツ(Northern Lights)
の方が一般的な単語です。
ちょっと科学に詳しい人だと、正式名称(学名)を使うので、
- オーロラ・ボレアリス(Aurora Borealis)
- オーロラ・アウストラリス(Aurora Australis)
(ボレアリスは「北の」、アウストラリス(「オーストラリア」の語源と一緒)は「南の」と言う意味のラテン語)
と言っていました。少し前まで、英語圏では「オーロラ」と言っても通じない人が殆どでした。
そして、日本語ではこの正式名称を訳しているので、
- 北極光(北半球で見えるオーロラ)
- 南極光(南半球で見えるオーロラ)
と、本当は言います。
海外で「オーロラ」と言っても通じない?
はい。かつては殆ど通じませんでした。
理由をいくつか挙げると、
- そもそも日本人以外で、「オーロラ」をいう自然現象を知っている人が少なかった
- オーロラは英語圏では「ノーザンライツ(Northern Lights)」と言うのが一般的。逆に、オーロラを知っている人は「オーロラ ボレアリス(Aurora Botralis)」という呼び方をする
- 英語ではオーロラと発音せず、「アロウラ」とか「アウロラ」のように発音する
- 日本人以外で、自分の土地以外で起こる自然現象に興味を持つ人が少ない
といったところでしょうか。
最近は、ディスカバリーチャンネルなどこちらの番組でも「Aurora」という単語を使うようになる程、通じるようになりました。でも、「オーロラ」と「ミルキーウェイ(天の川)」を混同しているような人はいっぱいいます。
ちなみに、ラテン語でオーロラは「東の方角」「夜明け」を意味しますし、「バラ色」見たいな輝きを表す言葉としても使われるので、女性の名前には使われます。
有名なのは、「眠りの森の美女」のオーロラ姫。
また、「アロウラ(Aurora)」という苗字もあります。
そして、「オーロラ」を英語の一般名詞にしたのは、日本のオーロラ旅行者の功績です。
各国のオーロラの記録と神話
北ヨーロッパを中心に、各地でオーロラの記録はあり、言い伝えとして残っています。
北部欧州では緑のオーロラを見る機会が多かったので、オーロラを「精霊の姿」として考えることが多かったようです。
- グリーンランドのイヌイットの間では、
「死んだ子供や女性が地上の親戚に会いに来ている」と考えられていました。 - 北米イヌイットの間では、
「オーロラから聞こえるヒューヒューと言う音は、天界の精霊たちが地上の人々に話しかける声」と考えられていました。 - バイキング達は「北の光」と呼び、北方に現れるオーロラを道標のように使っていました。
これが中緯度の欧州になると、オーロラ自体がたまにしか見られないだけでなく、見えた場合でも赤いオーロラになることが多く、オーロラへのイメージがガラッと変わります。
実際に赤いオーロラを見ると分かるのですが、黒味がかった赤色で、綺麗ではないのです。
そのために赤いオーロラは
- 天界で繰り広げられている戦いの火花
- 天上で起こった火事
- のたうち回る大蛇(ペストや死神を連想するらしい)
- 神の怒り
と考えられて、疫病や飢饉、戦乱や天変地異の前兆と言われました。
赤いオーロラに対する感想は北米先住民の間でも同様で、あまりに激しいものだと、
- 血の海
- 髑髏の舞い
と呼び、欧州と同様に疫病や飢饉の前兆と恐れられました。
ちなみに、あまりオーロラの現れないアジアでも、中緯度の欧州と同じく赤いオーロラになることが多く、よく思われていません。
古代中国では
-為政者に対する天の怒り
と考えられていて、大きな戦乱の前兆と考えられました。
ちなみに中国では、紀元前数百年前間で遡ると、約千例のオーロラの記録が残っていて、そこではオーロラについて「天裂」とか、「燭龍(光る龍)」などという表現が見られるそうです。
ですから妖怪のようにも扱われていて、奇書「山海経」の中では「燭龍」について
- 「体は蛇、顔は人、色は赤、長さ千里あまり。目を閉じれば暗黒に、目を開ければあたりが明るくなる。この動物は食べず、眠らず。空にこれが増えれば、雨風が吹き荒れる」
とあります。オーロラの動きを的確に表現していると思います。また、
- 「数匹の蛇がやってきた。まず赤い蛇が西寄りから、続いて青と黄色のものが南より、更に北側の山の向こうより、白い蛇と黒い蛇が来た。どれも、形がはっきりしている」
という記述もあります。
普段はイエローナイフなどのオーロラオーバルで見られる活発なオーロラを表現しているように思われます。
日本で見えたオーロラの記録
日本でも、古くから「オーロラが見えた」と思われる記録がいくつか残っています。
緯度が低いので、見えたオーロラはやはり「赤いオーロラ」なので、古代の人は「赤気(せっき)」と呼んでいました。
また、ほかの地域と違い、「山の向こうの火事が空に映っている」と思う人が多かったようです。
年代順に、主な観測記録を載せてみます。
- 620年 日本書紀(12月30日)。「天有赤気、長一丈余、形似雉尾」
推古天皇の時代です。(天に"赤気"有り、長さ以上余り、その形雉の尾に似たり)
- 682年 天武天皇の時代の記録(9月18日)。
「(意訳)不思議な形の物が空に現れた。色は火の色。北の空に浮かぶ。国中の者が是を見て、「海の向こうへ続いていた」と言う者も。この光は、東の空が白くなるまで見ることが出来た」と、かなり詳しく書かれています。
- 1204年 明月記(藤原定家)。
「(意訳)晴れ。北の空に赤気あり。その根は月の出る方向。白色が四、五箇所あり、赤い筋三、四箇所あり。雲ではない。白色、赤色が相交わり、奇妙、恐ろしい光景である」
- 1310年 徒然草(吉田兼好)の中の記述。
2006年頃、郷土史家でもある高校の先生が見つけました。
- 1582年 (4月頃)宣教師の報告書に「空が赤く染まった」という記録があり、宣教師はその中で「何か悪いことが起こるのでは」と心配しています。
2002年大河ドラマ「利家とまつ」では、そのときの記述を元に様子が再現された回があり(第24回「赤い星」)、赤い夜空と流星群のシーンがありました。
- 1770年 星解(東北大学図書館狩野文庫蔵書)の9月17日の記録。
「北方に、山を隔てて、左右一面に空中赤気あり。大火のようである。」
「京都より見れば、若狭国に大火があるの如し。江戸にしては下総常陸のあたり、大火事。原因も分からず、日本国中見えないところはなかりよし」
「闇夜にもかかわらず、人面がわかる。白い数本の筋はすぐ消えたが、赤い色は明け方まで残った」
などと、非常に規模の大きいオーロラが現れたことが分かります。
- 1909年 北海道(9月25日)。このとき初めて「北極光」という言葉が使われました。
(以下、小樽新聞(現北海道新聞)より抜粋)「札幌に極光現る?一等観測所を煙に巻く怪現象」
「一面に濃紅色の光、湾曲しては現われ、百年間に五、六回位現はる極めて珍しきものなり」
「人々をして見るからに不思議の感想を抱かしむる程なり」
「右に、左に上と下に十回、光が見えた。漬梅干くらいの赤味。その赤い部分に一切に追々白身を加えて、白条線幾つとなく現われ、何となく気味が悪いような心地がする。電磁気の作用が激しきに至り人命をなんとかする程になるのではあるまいか」
この日のオーロラも規模が大きく、秋田、新潟でも観測されました。
かなり精査して「間違いない」と言われているものだけで、これだけの記録が確認されました。
その後、カメラや観測機材の技術が進み、現在は、写真撮影でなら、毎年「日本でオーロラの写真が撮れた」という報告が出るようになってきました。
昔の人が考えたオーロラのメカニズム
北から現れる不思議な天の光・オーロラ。
科学の発達していない古代の人々も、いろいろな方法でオーロラという空の現象を説明しようとしていました。
- 古いものだと紀元前4世紀。アリストテレス(ギリシャ)は「暗い天の裂け目から炎となって噴き出すガス」とオーロラ(と思われる)の夜空の発光現象を説明しています。
- 11世紀ごろのバイキングたちは、
オーロラは燃える炎のようだ。この灯りのおかげで周りが明るくなり、狩猟に出かけることもできる。この光の原因は、次の3つが考えられる。- 「外洋を取り巻く炎」
- 「地球の下から放射される太陽光線」
- 「氷河から発せられる火炎」
17世紀になると、仮説に科学的な要素が入ってきます。
- 風と雲が衝突し、その圧力点に太陽光が反射
- 北極海を取り巻いて燃える炎
- 地震で噴出した水蒸気が上層で発火
- 火山から噴出した原子の発光
- 巻雲の氷の結晶に太陽光が反射した光
- 金鉱から出る蒸気
- 氷山からの反射光
- 魚の大群が雲に反射した光
時代を反映した、もっともらしい理由のあるものが増えてきました。
この当時は、「オーロラは地球をドーナツ状に覆って光っていて、いま目の前に見えているものはその一部分」ということを知らなかったので、山や海の向こうから、オーロラが上ってくるように思っていました。
ちなみに、オーロラが地球上にドーナツ状に現れているのが確認されたのは、ずっと時代が下っていって人工衛星の時代になってから。まだほんの40年程度のことです。
関連項目
- プレミアムサイト街中でもオーロラは見られるでしょうか?(ケース1)
- よくある質問のオーロラ関連