MoonlightAurora
満月にオーロラは見える?見えない?
満月にオーロラは・・・

まずは、右に載せている写真を見てください。
ご覧のとおり結論から書いてしまうと「見える」が正解です。
映っているのは太陽ではなく、満月です。
でも、実際にはこの事実はあまり知られておらず、つい最近まで
「満月ではオーロラは見えにくい」
と言うのが一般的な情報になっていました。
その為に、
「この時期しか航空券が取れなかったら」とか
「この時期しか休みが取れなかった」という理由で
満月の前後にやってきた旅行者からは、月夜のオーロラを見てびっくりされることが何度もありました。

最近は、満月のオーロラを撮るために、わざわざ月夜を選んでやってくるリピーターカメラマンも現れるようになりましたが、今度は「どうして日本にいるときに教えてくれなかったの?」と、現地でガイドに言う旅行者も増えてきました。
最近(2010年)の旅行パンフレットには
「満月でもオーロラは見られます」と
記載が出るようになりました。
しかし本当は、イエローナイフから「満月でもオーロラはちゃんと見えます」と案内を始めたのは2000年から。
本当のことを載せてもらうのに何と10年かかりました。
ほんの数年前まで、「オーロラの見やすい新月に合わせて出発日を設定しています」という、現地から見れば誤報と言えるツアーのパンフレットがたくさん並んでいました。
なぜこんなことが起こるのか? どうしてそんなに本当のことが伝わるのに時間がかかったのか?
今回は、「満月のオーロラの楽しみ方」と一緒に、解説していきます。
満月のオーロラのメリット
満月や月夜のオーロラは、“初オーロラの旅行者向け”と言えます。
主なメリットは
- 周りや足元が明るいので行動しやすいこと
- 懐中電灯を使わなくても、屋外でカメラを操作できること
- 月夜のオーロラの方が、(相対的には)短い時間で撮影できることが多い
などです。
特に、夜に外を歩くのが大変な方にとっては、新月よりはるかに安心と言えるでしょう。
なぜ「満月でもオーロラが見える」という話が伝わらなかったのか?
簡単に言うと「みんなが信じてくれなかったから」なんです。本当に・・・。
もう少し正確に言うと、「固定観念と先入観が強すぎて、実際に満月のオーロラを見ない人以外には、どうしても納得してもらえなかったから」で、なかなか本当の事が伝わりませんでした。
では、どうして伝わらなかったのかですが、主にこの三つの理由からです。
- イエローナイフから、直に情報を案内できる方法が無かったから
- 案内する人の固定観念が強すぎたから
- オーロラの案内人より、星空写真家の声の方が大きかったから
この三点のために、「満月にもオーロラは見える」という、本当の事が伝わりませんでした。
では、この三つについて、詳しく案内していきましょう。
1、イエローナイフからの情報発信が出来なかった
「満月オーロラ」を伝え始めた2000年当時はインターネットの黎明期。
ウェブサイトを作るのには大変な労力が掛かるので、簡単に新しい情報をポンポンとウェブ上げられる状況ではありませんでした。
もう一つ、この時期のオーロラツアーは第一次隆盛期で、旅行者が急激に増えている時でもありました。
イエローナイフの場合は文字通り、
「飛行機の座席とホテルの部屋が空いている限りの」旅行者がやってきていた時期で、
その当時は「スタッフの確保が旅行会社の最重要課題」でした。
- 夜にエドモントンから到着する飛行機の8割が日本人旅行者、
- 主要ホテルに泊まるお客さんのオーロラ旅行者の比率は5割以上、
- イエローナイフ全ての大型バスを借り上げて・・・
と言うのは今となってはいい思い出ですが、
シーズン中も、(人材集めをしている)シーズンオフも、「現地から情報を発信する」などと言うことは、到底できる状態ではありませんでした。
そんなブームのさなかに「満月のオーロラ」をテレビなどで紹介できていれば随分と状況が違ったと、今から振り返れば分かりますが、当時はとてもそんな余裕はありませんでした。
そして、ブームが去れば案内しても今度は情報が伝わらず・・・、その後に大きく響きました。
- イエローナイフ オーロラ速報が始まったのは2007年夏
- アラスカのLive! オーロラが始まったのが2008年
その他、実際にオーロラ旅行に行って写真を撮った方のホームページやブログによって、やっと現地の声が届くようになりました。
2、案内する人の固定観念が強すぎた
「オーロラ」とはどういうものか、2000年のオーロラブームのおかげで日本の旅行会社のスタッフにも認知してもらえましたが、それ以降の案内はなかなか伝わってくれませんでした。
オーロラツアーと言うのは旅行業界では「僻地ツアー」ですから、なかなか本腰を入れてもらえず、案内不足になりがちでした。
そして「僻地ツアー」場合、旅行センターで分からないことが出ても(情報問い合わせの中継地が多すぎて)現地には問い合わせをせず、

- (スタッフA)「満月ってオーロラ見えるのかな?」
- (スタッフB)「難しいんじゃない?」
- (スタッフC)「難しいよねー」
という相談により、問い合わせた旅行者には
- (スタッフA)「満月にオーロラは見えません(断言)」
と、返答されてしまっていました。
5年前までは、このように案内された方は多かったようです。最近になってやっと、「満月でもオーロラが見える」と案内してもらえるようになりました。
3、オーロラ案内人より、星空写真家の声の方が大きかった
月夜のオーロラを知ってもらう上で、一番妨げになったのがこれです。
少なくとも、「満月オーロラ」を認知してもらえるまでの期間を数年延ばされてしまいました。
星空写真家は光度の低い星や星雲を撮りますから、
「月の光など撮影にはもっての外!」という写真撮りです。
そして、星空写真家でオーロラも撮る人は、実はかなり少数なのです。
ですから、実際にオーロラの撮影をしたことのない星空写真家が三段論法的に、
- 「オーロラ」=「夜に空で光るもの」=「月の光が無い方が良いに決まってる!」
と考えてしまうのは当然と言えるでしょう。
そして困ったことに、この三段論法がとっても説得力を持ってしまうのです。
なんと言っても、本当の夜空の写真と撮る人達なんですから。。。
一方、オーロラを撮るカメラマンは100人ぐらい。
どんなに私たちが
- 「満月でもオーロラは見えて、きれいですよ」と案内しても、
数千人いる星空写真家が
- 「月夜にオーロラ? ムリムリ。見える訳ないじゃん!」
と言ってしまったら勝ち目がありません。
対抗するにも声の大きさ(人数)が違い過ぎて、最初は全く話になりませんでした。
近年になって「月夜のオーロラ写真」が出回るようになり、「月夜でもオーロラが見えるんだ」とやっと納得してもらえるようになりました。
現在の旅行パンフレットには、
現在(2010年)の旅行パンフレットには、「オーロラは月夜でも見えます」と書かれることが多くなりました。
もし未だに「満月の夜はオーロラが見づらいので、新月の・・・」と書いてあるパンフレットがあったとしたら、その旅行会社のツアー自体が古い情報を基に作られていると言えるでしょう。
こうした変化により、一般の人にもやっと「満月のオーロラ」が知られるようになってきました。
実際の満月のオーロラは

実際の満月のオーロラですが、明るい空に浮かぶ虹色の光のカーテンはとても幻想的。
新月でしかオーロラを見たことがない人は、その光景にびっくりすると思います。
夏と冬とで(周りの景色が違うので)見えるオーロラが違うように、新月のオーロラには新月の、満月のオーロラでは満月の良さがあるので、ぜひ両方とも楽しんでほしいものです。
終わりに
それにしても、本当のことを知らないというのは勿体ないものです。
実は先日(2011年2月)、
「4月にオーロラを見たいと思って旅行会社に相談したら、
『4月はオーロラが見えないのでやめた方が良いです』
と言われたんですが本当ですか?」
という問い合わせがありました。
本当は、「4月はオーロラの観測成功率が最も高い時期」なんです。
それを知らないなんて、なんて勿体ないことを・・・。
写真提供:
ナヌック オーロラツアーズ
Ricki Koichi Shimada